サボテンの王子様

そう言われて、ぎくりとした。


それって…



「元彼の名前だって、振られた理由だって」

自称サボテン男は続ける。

「今回陽子のことを振った男を、陽子がどれだけ好きだったかも知ってる」


嫌な汗が流れる。


「俺が知ってるのってそういうことばかりじゃなくて」

「もっと陽子の恥ずかしいところとかも知ってるんだぜ」


そう言うと、サボテン男は無理やり私を自分の方に向かせた。

もし、この男が本当に私のサボテンだったら…
私はもう…


「…でも、全然具体性がないじゃない。ハッタリよ。」


そういうと私の耳もとで意地悪く囁いた。


「元彼の名前は佐々木良、なかなかのイケメンだったよな。今回のは上谷祐平、後輩な。

あと…

陽子の左胸にはほくろがある。背中のやけど跡はきれいになってきたよな。」


そういうと彼は満足げに私の顔を見た。



この痴漢はこういう手口でいろいろな人を丸め込めてるのかもしれない。
そんな淡い期待はもろくも崩れ去ったのだった。



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