貴女は信じますか?
 夏美の死から二年、悲しみは日を追う毎に薄れていった。日々の仕事の忙しさというのもあったが、やはり人間の脳には哀しみも忘れさせる機能が付いていると感じた。
夏美と結婚の話が出ていた矢先の夏美の死に、恋愛は暫く出来ないと思っていた健吾であったが、同じ職場の神田和美という女性と次第に個人的に会うようになっていた。
もっともそれは自分から誘ったというのではなく、仕事で同じチームを組んでいた為その流れで仕事帰りに皆で一緒に飲みながら打ち合わせをしたのがその始まりだった。
それから次第に二人で飲みに行くようになり、休みの日にも会うようになっていた。
一人で過ごす寂しさから一緒に出掛けてはいたが、夏美の死から二年しか経っていなかった健吾の心の中には夏美に対して済まないという気持ちがあった。
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