問題児のヒミツ[短編]
そして、あたしに目線を合わせると、少し声を高くして、
「みやびちゃん」
と言った。
ドクンっ、と心臓が跳ねたのがわかった。
そして、パズルのように、記憶がカチリ、とはまるのも。
「……しー…ちゃん?」
「ははっ、そう呼ばれんの久しぶり」
ケラケラと鈴谷は楽しそうに笑うけど、あたしは動揺してそれどころじゃなかった。
「え、なんで!?え、えぇ!?」
「なんでもなにも、お前が自分で今"しーちゃん"って言ったろ?」
「そ、そだけど!なんでアンタが……!」
あたしの記憶が正しければ、確か名字は"小暮"だったはず……。
……そうだ、コイツは、あたしの幼馴染みだった小暮…いや、今は鈴谷雫か。
小学4年生まで。
両親の離婚により、引っ越していった、あの日。
この間、夢に出てきたのはその時のことだ!
確か、花束をもらって……
『大人になったら、僕、むかえに来るからね!泣かないで待っててね、みやびちゃん』
そんな感じの言葉を……
「なんだ?顔赤くして。思い出したのか?」
ニヤニヤと楽しそうな鈴谷……のお腹に、軽くパンチをする。
「いてーなぁー。つーか、さすがに同じクラスになったら気づくだろ?ひどくね?」