問題児のヒミツ[短編]
「ちょっ、な、なにしてんの!あたしん家の前でっ……」
「雅は、俺のこと待ってなかったの?」
「……」
なにも言えなかった。
なんかもう、泣き出しそうな声だったから。
あの頃の、"しーちゃん"と重なった。
泣き虫な、"しーちゃん"と。
「俺、引っ越した先でもずっとお前のこと考えてたし、告られても、全部断った。それぐらい、お前のこと……」
「好きなんだよ…」
ぎゅ、と抱き締める力が強くなったかと思うと、ぱっ、と突き放されてしまった。
「え、鈴……」
「……っ」
目を合わせる前に、鈴谷は走り出してしまった。
あたしは、呆然と立ち尽くして……る場合じゃないでしょこれは!
追いかけなきゃ。