問題児のヒミツ[短編]
「なんだよ、来んなよ…っ」
上から聞こえる涙声。
泣いてたの?
あの鈴谷雫が?
……違うか、アンタはしーちゃんだもんね。
「…雫、聞いて」
あたしは、恥ずかしかったけど抱きついたまま、話をすることにした。
「あたし、雫のこと、忘れてたって言ったけどそれは、好きじゃないからとかじゃなくて、その……、
待ってるの辛かったし、会いたくて…。
だったら、忘れちゃえって、無理矢理追い出したの。
そしたら、ホントに忘れちゃっ……」
「雅、もういいから」
「なにがいいの、ちゃんと聞いてよ!
あたし、あたしは……、
雫が大好きなの!!」
あたしが叫びに近いぐらいにそう言うと、雫の体がぴくっと動いた。
あー、あたし道の真ん中でなんて恥ずかしいことしてるんだろう。
抱きついてるし、叫ぶし…。
「みや…」
「い、いい!振り返らないで!」
こっちに体を捻ろうとするのを感じて、あたしはグッと腕に力を込めた。
だって、顔真っ赤だから見られたくない。