問題児のヒミツ[短編]
Episode 5
ピンポーン
朝の、日南家にチャイムが鳴り響く。
「はーい」
お母さんが玄関に行くのを見て、あちゃー…、と少し思う。
だって、今来たのきっと雫だから。
あんな金髪見たらお母さん焦って倒れたり……
「あらぁ雫くん?久し振りねぇ!もう、カッコよくなっちゃって!」
……な、なんでわかったの。
恐ろしいなお母さん。
数ヵ月同じクラスにいたのに気づかなかったよあたし。
「あ、雅!雫くんが来てるわよー」
あたしは下りかけの階段を下りて、ローファーに足を入れた。
「知ってるよ」
「もぉ、お母さんに報告は?」
わくわく、とあたしを楽しそうに見るお母さんの横をすり抜ける。
そして玄関を閉めた。
「おい、母さんいいのかよ」
「いいよ、めんどくさいことになるし。……おはよ」
「はよ」
あぁ、顔を見るとどうしても思い出してしまう。
「なーに下向いてんだよ、照れてんのか?雅らしくもない」
「照れてなんかないし」