問題児のヒミツ[短編]
「そんなに急ぐ必要がどこに……」
ガララッ
「せんせ、日南……おわっ!!起きてる!」
「うるさい…」
きっ、と睨むと鈴谷はびくっと肩を震わせた。
そんな私たちの雰囲気を見て、先生と花凛は、
「あ、わ、私職員室に仕事残してきちゃったから出るわね。ゆっくり休んでいって」
「あ、あたしも、授業受けなきゃ!お大事に、みや!」
「え、ちょ、せんせ、かり……」
カララッ……
二人はそそくさと出ていってしまった。
もう、そんな逃げるようにしなくたって。
「ふぅ……」
鈴谷はパイプイスを引っ張ってくると、ベッドの脇において座った。
「ごめん……痛いよな……?」
今まで高圧的だと思ってたこいつの性格。
こんなに心配されると思わなかった。
ポカン、としていると、なに?と言われた。
「意外だな……と思って」
「アホか。女に怪我させて謝らないやつがどこいんだよ」
下を向いて表情が見えない。
「いるよ。世の中には悪いひとなんていくらでもいる」
「俺はそんなやつらとちげぇってことだよ。怪我させて、なに言ってんだって感じだけどな」
「大したことないよ」
おかしいな。
なんでフォローするようなこと言ってんのかな。
優しさの一面を、垣間見てしまったからかも知れない。
もしかしたら、そんなに悪いひとじゃないのかもしれない。