2人だけの秘密。
鏡子 side
「ねぇ鏡ちゃん、本当にいいの?」
「…」
修史さんが背を向けて歩き出したあと、隣にいる祐くんがそう言った。
その問いかけにあたしが黙り込んだままでいると、祐くんが言葉を続けて言う。
「あの人行っちゃうよ、」
「…」
その言葉に、あたしは涙声で言った。
「…いいの」
「!」
「あたしにはミキちゃんがいるから」
そう言うと、溢れだした涙を拭う。
…実は、「結婚している」というのは真っ赤な嘘で。
本当はあたしは修史さん以来全く恋人なんていなかったし、今ここにいる祐くんだって本当は旦那さんなんかじゃなくて、ただのイトコ。
だけど、修史さんと離れる為にわざと嘘を吐いた。
あたしにはミキちゃんがいるし、だから修史さんにはあたしのことをキッパリ諦めてほしいから。
でも……
「…じゃあ何で泣いてんの、鏡ちゃん」
「泣いてないっ…」
まさかあのタイミングで謝られるなんて、思わなかったな…。