2人だけの秘密。

その瞬間、至近距離で修史さんと目が合う。

心臓が大きな音を立てだして、不思議と目が逸らせない。

ますます溢れてくる涙にまた視界がぼやけていくのを感じていると、修史さんがフッと切なく笑って…



「…鏡子って、泣き虫だよね」



そう言って、あたしの涙を優しく指で拭った。


…どうして？



「……て？」

「？」

「どうして、笑ってくれるの？」

「え、」

「どうして涙を拭いてくれるの？どうして、怒んないのっ…！？」



あたしはそう言うと、修史さんの手をどけて再びその場に泣き崩れる。



「鏡子っ…」


「だってあたし、修史さんに酷いことしたんだよ！

愛してるって言って、ずっと傍にいるって約束したくせに、急にいなくなって元カレとの子供生んで、それなのに勝手に結婚したとか言って…！

ここは怒るのが普通でしょ！？なのになんで修史さんはそれでも優しいの！？ふざけんなよって言って殴ってよ！広喜くんみたいに、思い切り…！」


「！」

「修史さんがそんなだったら、あたしの方が修史さんのこと忘れられなくなるじゃないっ…！！」



そう言って、あたしは子供みたいにわんわん泣いた。

一方、そんなことを言われた修史さんは一瞬戸惑っていたけど、やがてあたしを優しく抱き寄せてくる。

でも、その優しさが痛い。

その腕をほどこうとしたら、修史さんが言った。



「じゃあ忘れんなよ」

「！」

「……なんてな。鏡子を殴れるわけないじゃん。俺は本気で鏡子を愛してんだよ」