2人だけの秘密。


「な、何ですか?」


不自然だったと思う。

けど、緊張が邪魔をして。

そんなあたしに修史さんが言った。


「こっち来て」

「!」


そう言われ、返事をする間もなく手を引かれる。

そして修史さんの隣に密着して座らされると、ドキドキが更に激しくなって、顔が熱くなった。


「…っ、」


ああ、まずい。

あたし今、絶対顔が赤い。

だってこの展開はきっと…


「…鏡子、顔上げて」

「!」


ほら、きた。

やっぱりキスするんだ。

ドキドキしちゃっておかしくなりそう。

だけどそのうちにも、修史さんがあたしの顎に手を添えて、目を合わせるから。

震えてしまう手足に少し力を入れて、目を瞑って、あたしは静かにそのキスを待った。

…待った、けど。


「…ふっ、」

「…?」

「くくっ…」

「え、」


ふいに暗闇から聞こえてきた、修史さんの笑い声。

その声を不思議に思ってゆっくり目を開けると、そこには何故か笑ってる修史さんがいて…。


「あ、あの…修史さん?」


そんな修史さんがわけがわからなくて、あたしが口を開くと、修史さんが言う。


「鏡子、顔真っ赤!」


そう言って、未だ可笑しそうに笑いを堪える修史さん。

その修史さんの言葉にあたしが慌てて両手で頬を覆うと、修史さんが言葉を続ける。


「んー…っつかさ、」

「?」

「期待しちゃったんだ?俺が鏡子にキスするって」

「!」


そう言って、再び笑い出す彼。

その瞬間、あたしはようやくこの状況を把握した。

…ハメられたんだ。

この超意地悪な彼に。

あたしはそれに気がつくと、修史さんに言う。


「っ…もう最悪!あり得ない、意地悪!」

「…」

「そりゃあ、さっきの展開は誰だってそう思いますよ!すっごくドキドキしたのに、弄ぶなんっ、」


しかし、あたしがそう言って怒っていると…


「っ…!!」


その時。

修史さんに不意を突かれて、言葉を遮るようにキスされた。



【観覧車の不意打ち/おまけ②】



(あの時、確かに最初は修史さんの行動に怒っていたけれど…)
(今思えば、修史さんはあたしの緊張をほぐすためにわざとそう言った、のかもね)
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