2人だけの秘密。
そして車から降りると、しばらく歩いて階段を上がる。
…もう大丈夫なはずなのに、身体はまだ震えている。
「どーぞ、」
「…失礼します」
そう言って柳瀬店長のマンションの部屋に上がってリビングに足を運ばせると、
あたしの後ろでドアを閉めながら柳瀬店長が言った。
「…そんな気遣わなくたって平気だよ。疲れちゃうでしょ?」
「で、でも…」
「心配しなくたって怒ったりしないから。
あ。あと、呼び方も変えようよ。家でも“店長”って呼ばれるのは、さすがにキツイな」
柳瀬店長はそう言うと、その辺に鞄を置いてあたしに近づいてくる。
あたしはその行動にすら緊張していたけど、それを抑えながら柳瀬店長に問いかけた。
「じゃ、じゃあ何て呼んだらいいんですか…?」
あたしがそう聞いたら、柳瀬店長が即答して言う。
「下の名前を呼び捨てがいい、」
「!」
え、し、下の名前って…。
…確か、柳瀬店長の下の名前は…「修史」。
それって、柳瀬店長のことを「修史」って呼べってこと!?
いや無理!普通に無理だから!
あたしはそう思って独り首を横に振ると、ソファーに腰かけてタバコを吸いだす柳瀬店長に言った。
「出来ませんよ!じょ、上司に向かってそんなこと…」