2人だけの秘密。
柳瀬店長はそう言うと、びっくりして固まるあたしの頬に優しく手を添えた。
その手の感触に、あたしの肩がビク、と震える。
身体中の全神経を頬に集中させていると、柳瀬店長が
「…だから、俺のこと、名前で呼んで?」
そう言って、少し切ない表情であたしの顔を覗き込んだ。
顔っ…顔が近いよっ…!
一方、思いもよらぬ告白を受けたあたしは、ドキドキしすぎてもういろいろ訳がわからない。
二人きりのこの空間で、お互いの顔が近くてまともに息をすることでさえも出来ないし、
自分の顔がどんどん赤くなっていくのが、まるで目で見ているようにわかる。
そのうちその空間にもじっとしていられなくなって、あたしは観念したように柳瀬店長に言った。
「…しゅ、…」
「…」
「…修史、さん」
「!」
あたしがそう呟くと、柳瀬店長はしばらく目をぱちくりさせたあと、やがて嬉しそうな顔であたしに言った。
「…さん付けか。でも、それはそれでいいね」
そう言って、頭を優しく撫でられる。
「…っ、」
物凄く甘い空間が流れる現実で、あたし達は夢の中と似た空間を過ごした。
…修史さんの手は、安心しちゃうくらい優しい。
あたしはその優しさに目を瞑ると、静かに修史さんのそれを記憶した――――…。