2人だけの秘密。



その後は売り場を後にすると、あたしは裏にあるたくさんの在庫を整理するためにそこに向かった。

お客さんの前でいつも緊張して失敗ばかりを繰り返すあたしは、基本売り場には出ずにこうやって在庫整理か事務仕事をしていることが多い。

出るとしたら、お店の隅の方に設けてある小さな遊び場で子供達の遊び相手をするくらい。

レジになんて、もうどれくらい立ってないんだろう…。






入社したての頃は、おもちゃ屋さんっていうのはもっと楽しくてワクワクするような仕事なんだと思っていた。

だけどいざ本格的にこの仕事をやってみると、地味な仕事が多いし力仕事もいっぱいあるし、

言っちゃなんだけど、楽しく思うようなことってあんまりない。


……こんなはずじゃなかったんだけどな。


本当はもうこの仕事を辞めてしまいたいけど、お金が必要だから今はまだ辞めるわけにはいかない。

でもせめて、仕事をしている上で刺激がほしいと思ったりもする。

毎日同じような一日には、正直もうそろそろ飽きてきた。


……なんか、面白いこと、ないかな。






そんな時、あたしは出会ってしまったんだ。

つまらなかったはずのこの「おもちゃ屋」で、

まさか“君”に出会うことになるなんて、この時のあたしは全く知るよしもなかったんだ―――…。




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