妖刀奇譚
友達になるのに大した理由はいらない。
先ほど玖皎に言ったこの言葉は、隣にいる幼馴染に昔教わったものだった。
「……來世って、ばかだけどばかじゃないときあるよね」
「な、なんだよ突然」
「べっつにー」
思葉は戸惑う來世を放って立ちこぎを始めた。
「ちょ、待てよ思葉、おまえなんかテンションおかしくねえか?」
來世が思葉よりも早くペダルをこいで再び横に並ぶ。
ちらりと目を向けてみると、心底心配している表情を浮かべていた。
頬の内側を噛んで文字通り笑いを噛み殺す。
「別におかしくないわよ、いつも通りでしょ?」
「どこがだよ、あ、もしかして酒でも飲んだのか?」
「未成年が飲むわけないでしょ、ばか」
「え、おまえ、じいさんのビール盗み飲みしたこととかねえの?」
「あんたはあるの?」
「父さんの飲み残したビールを焼酎」
「は?」
「いやいや、しょっちゅうと焼酎をかけてみただけっす」
「ばか」