妖刀奇譚
変
返却された物理のテストが思ったよりもいい点数だった。
最も心配していた教科をクリアすることができ、思葉は安心して息をつく。
数学と化学も悪くない結果だった、これだけ稼げていれば本試験で多少失敗しても何とかなる。
「思葉、どうだった?」
後ろから來世に背中をつつかれる。
思葉はテスト用紙の角を折り曲げて『54』の数字を隠した。
「赤点じゃないよ、でも絶対に教えないから」
「お、全教科赤点回避か。やったじゃん」
來世がおどけて拍手を送る。
振り返ったとき、視界にテスト用紙が目に入った。
92という数字にやっぱりと思うと同時に苛立ちが芽生える。
真面目に授業を受けている思葉が54点なのに、スキあらば居眠りしたり内職したりする來世が92点、クラスのトップ。
なぜこの世はこんなにも不平等だろうか。
教師が全体に向けて話を始めたので身体を前向きに戻す。
ひとまず平均点はぎりぎり超えたから合格だ。
明るい気持ちでテストの解説を聞き、終了のチャイムで解放された気分になった。