妖刀奇譚
思葉は後ずさり、來世の頭を叩く。
乾いたいい音がして、來世は痛そうに頭を抱えた。
「痛ってぇ、何も叩くことないだろ?」
「あら、殴ってほしかったの?」
「そんなこと言ってねえだろうが、ばかになったらどうしてくれんだよ」
「いっそのこと頭のネジ外れまくって大ばかになればいいと思う」
「うわっ、鬼発言!」
もう一度來世の頭を引っ叩き、思葉は手をひらひら振る。
「で、また富美子おばあちゃんが訪問販売を迎え入れちゃったの?」
「さっすが思葉、話が早くて助かるぜ」
「はあ?何言ってんの、行くなんて言ってないからね」
肩を捕まえようとしてきた來世の腕からさっと逃れ、思葉は階段を昇る。
2段飛ばしであとを追いかけ、來世は顔の前で合掌した。
「頼む、思葉、この通りだ。
ヘルプミー!あ、違う、ヘルプ・マイ・グランマ!
今回はばあちゃん、けっこうその気になっちまってんだよ、おれが何言ってもダメだったし……。
それで思葉連れていくからそれまで待っててくれって」
「言ったのね」
4階に到着してじろりと思葉が睨むと、來世は腰を90度に折り曲げて頭を下げた。
そんな状況になっているのなら行くしかない。
大袈裟に喜ぶ來世をどついて、思葉は教室に戻った。