妖刀奇譚
品
「じゃあ、行ってくるな」
「気をつけてね、お土産待ってるよ」
土曜日の朝。
裏口でコートを着込む永近はよそ行きの格好をしていた。
足元には大きなキャリーバッグがある。
リュックも小洒落ているもので、どこからどう見ても旅行客姿だった。
「いいか、火の元と戸締りには十分注意するんじゃぞ。最近火事が多いらしいからのう」
「大丈夫だよ、ご飯はなるべく電子レンジで作れるものにするし、戸締りはおじいちゃんよりはしっかりしているからね」
「ばかもん」
渋面になった永近にぺし、と頭を叩かれて思葉は小さく舌を出した。
「ああそれと、店は閉めたままにしておきなさい。
……まあ、おまえが店番したいのなら開けてもいいが」
「あたしが家にいるときは、なるべく開けておくようにするよ。年中ほぼ無休で営業してるんだし」
「そうか。それなら販売は良しとして、物品の引き取りはせんでいいからな。
相手の名前と連絡先のメモをとって、わしが次にいる時を教えてあげなさい」
「はあい」
「……本当に大丈夫か?何かあったらすぐに連絡するんじゃよ」
「おじいちゃんもね。スマホの使い方覚えたの?」