妖刀奇譚
玖皎も現代の利便さを目の当たりにするからパソコンをとっても文句は言わないだろう、そもそもあれは思葉の持ち物だ。
文句を言ってきたら取り上げてやればいい。
「あ、その前にご飯の支度しなくちゃ」
カーテンを閉め、外に出る。
エアコンで温められた部屋の空気にすっかり慣れたせいで余計に寒く感じた。
思葉は両手で二の腕をさすり、早く中へ戻ろうと招き猫の板をひっくり返して『準備中』にする。
その陰に何か置いてあるのに気付いた。
「なにこれ」
それは長方形の箱を飲み込んだ風呂敷包みだった。
紫色の麻型の風呂敷には見覚えがある。
昼間にやって来た、あのやつれた雰囲気の男が鞄から出そうとしていたものだった。
(やられた)
思葉は顔をしかめる。
たまに、本当にごくたまにだが、店先に古い雑貨が置き去りにされることがあった。
捨て犬・捨て猫ならぬ捨て骨董だ……なんにも面白くない。
そして捨て骨董には、あまりよくないものが絡んでいることが多い。
大体は永近が祓ってくれるし、心霊でなければ思葉が引き受けてそこに残った未練を解決する手伝いをした。