妖刀奇譚
憶
涙が止まり気持ちが落ち着いてから、思葉は自分の部屋に戻った。
人の姿を得、家中を歩き回りたそうにうずうずしている玖皎も連れて行く。
平常心になったことで、いくつも疑問が浮かんできたのだ。
解決しないと、異なる意味でさらに眠れない夜を過ごす羽目になる。
テーブルを挟んで、ふたりは向かい合って座った。
思葉はなぜか正座をして、きょろきょろ部屋を見回している玖皎の姿を見つめた。
服装が現代のものでないからか、とても浮いている。
過去からタイムスリップしてきた人を目撃したらこんな感じになるのだろうか。
違和感がさらに違和感を具現化した服を着ているようだ。
その恰好がよく似合っているせいでなおさらおかしく思えてくる。
「なにをじろじろ見ているんだ」
不機嫌そうな黒目とかち合い、思葉はすぐに視線を外した。
玖皎が腕組み代わりに袖に両手をさしこんで息を吐く。
「それで、おれに聞きたいこととはなんだ」
「山ほどあるけど……とりあえず、さっき玖皎が追い払ってくれた、女の人?
あれって一体なんだったの?
人、じゃないよね……幽霊って感じでもなかったし」