妖刀奇譚
「それで、今日も店を開くのか?」
「うーん……」
昨夜やりかけたままの数学の課題をぱらぱらとめくって思葉は小さく唸った。
休日はお客が多いので、なるべく開いておきたいとは思う。
だが、それよりも気になることがあり、店番をしようという気分はあまりしなかった。
「今日はお休みにするよ、それよりやっておきたいことがあるからね」
「なんだ?昨日の付喪神でも探しに行くのか?
付喪神だけに限ったことではないが、妖怪が動くのは力が活性する夜だぞ。
おれは平気だが太陽の光は妖怪にとって妨げにしかならないからな」
「へえ、じゃあ妖怪とか幽霊が出るといえば夜っていうイメージはそこから来ているのかな」
「それは知らん」
「まあ、あの付喪神関係だけど、探しに行くわけじゃないよ。
あたしが気になっているのは、あの櫛を持っていた棟口さんなの」
「ムネグチサン?
……ああ、昨日店の前に櫛を捨てていった迷惑な客のことか?」
遠慮のない口調に思葉は苦笑しつつも頷く。