妖刀奇譚
硝子戸を開き、店内の電気を点ける。
番台の上に、開けてそのままにしてある木箱があった。
思葉は鞄を置いて木箱を手に取る。
飾り櫛と鋏がなくなり、あるのは毛抜きと二本の簪だけだ。
返すべきかと棟口に尋ねたら、彼は無害であるなら商品にしてほしいと言った。
蔵の肥やしにするより、誰かに使われた方が母も喜ぶだろうからと。
「……決めた」
「うん?」
「玖皎」
「なんだよ」
思葉は木箱の蓋を閉め、宣言するように言った。
「あたし、あの付喪神を探すわ。
見つけ出して、これ以上被害が出ないようにする」
玖皎が面食らったように言った。
「ちょっと待て。
おまえ、あんなにひどい目に遭わされたのに戦うつもりなのか?
今度は泣かされるだけじゃ済まないかもしれないんだぞ」
「だけど、一番事情を把握しているあたしが動くしかないでしょ。
大丈夫だよ、無理はしないから。
それに、玖皎がいてくれれば早く片付きそうだしね」