妖刀奇譚
「う……まあ、おまえがどうしても行きたいというのならおれも付き合うが」
玖皎が歯切れの悪い喋り方になる。
まだ迷っている様子だ。
思葉はくすりと笑って、柄を軽く叩いた。
「大丈夫、幽霊は死んだ人間だから生きた人間より強いわけがないよ」
玖皎が一緒にいてくれれば大丈夫。
その意味も込めて思葉は明るい声で言った。
玖皎がいてくれる、そう思うだけで、なんだか百人力を得たような気分になる。
それは相手を信頼していなければ決して抱くことのない感情だが、思葉は自覚していない。
気づいてか否か、気づいていないふりをしているのか、玖皎がため息交じりに言った。
「何言ってるんだ、相手は人間じゃないぞ。
ついでに言うと死んでもいないからな」
「えっ……あ、そうか。
相手は付喪神だったね、忘れてた」
「どうしてそういう忘れっぽいところも晴明に似てるんだよ」
玖皎は頭を抱えているような声で嘆いた。