妖刀奇譚
魔
外へ出ると、息が白くなるほど空気が冷えていた。
頬や鼻の頭がちりりとする。
一段と冬本番に近づいたようだ。
思葉はマフラーを巻き直して両腕をさすった。
「寒っ……うー、こんなに晴れてるのに……」
雲ひとつない空を見上げて、思葉は身を縮めながら表通りを歩いた。
すれ違うサラリーマンらしき人たちは皆、コートの襟を立てて寒そうに背中を丸めて駅を目指している。
追い越して行った2人の女子高生は、自転車なのにスカートがとても短かった。
寒くないのだろうか、見ているこっちが鳥肌がたつ。
「おはよう、思葉」
後ろから誰かが走ってくる音が聞こえて、声をかけられると同時に背中を叩かれた。
遠慮ない力に思葉は前のめりになって倒れそうになる。
「お、おはよう、來世……」
「あれ?」
「なによ」
「いや、やり返してこないのかなーっと」
戦闘態勢になっている來世に「ばか」と言って、思葉はマフラーを鼻のあたりまで引っ張った。