妖刀奇譚
狩
今日は13日の金曜日。
それだけで何となく気分が落ち着かなくなるのはなぜだろうか。
朝学校で会うや否やそのことを來世に聞かされ、夜になっても頭にこびりついて離れなかった。
何となく悪い予感がするのは何故だろうか。
「ああ、もう最悪……」
スマートフォンのアラームを止めながら、思葉はため息交じりに呟く。
あまりの低い声に、玖皎がびっくりしたように言った。
「なんだ、ずいぶんと機嫌悪いな」
「悪くもなるわよ……もう金曜日なのに付喪神見つからないんだから」
ここ5日毎夜、身体の調子がおかしくなるのを覚悟で、補導員に見つからないようびくびくしながら町を走り回った。
しかし、付喪神は見つからない。
でも学校で耳にする被害情報は絶えなくて思葉は落ち込みそうになっていた。
「ここまで見つからないと、もう金輪際出会えないんじゃないかって思えてくるよ」
「悪いな、おれがやつの波動を察知できればいいのだが……あのとき妖力を削りすぎちまったか。
微弱すぎてちっとも感じられん。
向こうがおれを警戒して尻尾を出さないようにしているかもしれんが」
思葉はテーブルに置いておいたクッキーを一枚つまみ、まだとろんとしている目で鏡の前に立った。
ぼさぼさになっている髪を適当に梳かしてポニーテールにする。