妖刀奇譚
「身に余るお言葉、ありがたく存じまする」
道臣が深く低頭する。
袖で口元を隠しながら、女が上品に笑った。
「まあ、身に余るだなんてとんでもございません。
こうして無事に姫さまの七歳のお祝いをすることができたのも、道臣どのがわたくしたちを妖怪の類からお守りしてくださるからこそ。
陰陽寮にいらっしゃった頃から噂は耳に届いていましたよ。
あの安倍晴明どのを唸らせた、播谷道臣という鬼才の陰陽師がいらっしゃるのだと」
「ああ、それは噂の独り歩きというものですぞ。
事実、わたしなど晴明どのを唸らせたのではなく、首を傾げさせただけですからな。
夜警の方も、晴明どのの式が宿る太刀がなければ、とてもわたし一人では務まりきれません。
しかしこのようにして姫さまの護衛を仰せつかったのも、わたしの実力を認められたからこそであると自負しております。
晴明どのには遠く及びませぬが、この播谷道臣、身を賭して姫さまをお守りいたします」
三度、道臣が低頭する。