妖刀奇譚
「誰のせいでぶつけたと思っているのよ」
「なんだ、まるでおれのせいだとでも言いたげだな」
「べっ、ベッドに男が居たら誰だってびっくりするに決まってんでしょ。
なんであたしと一緒に寝てんのよ。
蹴られたり引っ叩かれなかっただけありがたいと思いなさいよね」
「おいおい、おれは突然ぶっ倒れたおまえをここまで運んでやったんだぞ、横になって休ませてくれてもいいだろうに。
布団はこの部屋に一つしかないんだ、そうけち臭いことを言うな。
それにおれは刀だぞ、人間の男のように意識する必要はないだろう」
「あんたねえ……」
「まあ、驚かしたのなら謝る。気分はどうだ?」
思葉をさえぎり、玖皎が彼女の頭に手を載せる。
文句を言ってやろうとしたが、不意打ちを食らって思葉は口をつぐんだ。
行き場を失くした腹立たしさが無理やり抑えられ、もやつきとなる。
「……平気。疲れたけど、どこも痛くないから」
「そうか、それならいい。もう少し休んでおけ」
ぽんぽんと頭頂を撫でるように叩かれ、思葉は少しだけむくれて横を向いた。
こういう扱われ方は慣れていない。
気恥ずかしくてあまり好きじゃないのだ。