妖刀奇譚
「ちょ、ちょっと待て」
玖皎は気圧された様子で思葉の話を聞いていたが、あわててそれを遮った。
思葉の方へ両手を向け、一呼吸置く。
「落ち着け、というか、おれに少し整理する時間をくれ。
なんだ……姫が、おまえの夢に顕われたのか?」
「そうよ」
「それで……斬り殺されてからずっと、彼岸へ渡らず、おれを見ていたと?」
「そう」
「……今まで、千年もの間か?」
「そうよ、そう言っているじゃない。
あんただけじゃなかったのよ、琴さんも、あんたのことずうっと想っていてくれたのよ」
夢で会った、琴の姿を思い出す。
玖皎のことを想うその表情は、とても慈愛に満ちていた。
頭に思い浮かべるだけで胸が痛い。
「だけど、もうこれ以上この世にはいられないって。
阿毘とかいうのに力を借りて、どうにか自分を保ち続けていたみたいなの。
あたしに記憶を観せて、あたしの夢に顕われて話ができたのも、阿毘が力を貸してくれたからだって」
「阿毘が?」
玖皎がわずかに表情を堅くする。
彼も阿毘という地獄の使いを知っているようだ。