妖刀奇譚
唐突に顕われ、嵐のように去って行った彼らは、思っていたよりもよっぽど人間らしかった。
くしゃくしゃになった髪を整え、キャスケットを回収して音楽室を後にし、思葉は教室に向かいながら阿毘たちに言われたことを整理する。
単純なようで複雑なことが多くあり、噛み砕くのに少し時間が要る。
ただ、去り際に轉伏から言われた言葉だけは、はっきりと耳に残っていた。
君のできることを、君が正しいと思うことを精いっぱいやればいい。
きっとそれが答えになるから。
「思葉ー!」
「ふわあっ!?」
教室のある廊下に差し掛かったとき、後ろから大声で呼ばれた。
同時に肩をがしりと掴まれ、思葉は素っ頓狂な声を出す。
肩に載っている手をぴしりと叩いて振り返ると、そこにはなぜか泣きそうな顔をした來世がいた。
用件はもちろん、想像するに難くない。
「思葉、助けてくれ、またばあちゃんが」
「また押し売り?
今度は何を売りつけられたのよ」
「なんか、昔流行ったすっげえ絵師が描いた日本画だとか……」
「富美子おばあちゃん……」
廊下にはまだ生徒がまばらにいて、そのうちの何人かが2人の方を見ている。
だがその視線を全く気にせず、來世が顔の前で合掌をした。
「頼む、思葉、また一緒に来てくれ!」
「いいよ」
「そんな冷たいこといわ……え、ええっ、何て!?」