妖刀奇譚
「でも、霊感商品の販売を追い返すのは來世の方がうまいじゃん」
「あんなの簡単だよ、『おれ観えるんです』って言えば大抵すぐ帰るからな」
もちろん來世に霊感はない。
それをまるで本当のようにうまく言って、売りつけに来ようとした業者を追い払うのだ。
「だったら古美術だって一緒でしょ。
怪しいお祓いセットやお札が、胡散臭い古壺や絵画になるだけでしょ」
「一緒じゃねえよ。おまえ、さっきミイラ取りがミイラになるところ実際に見たじゃねえか」
「だからそれ自分で言う?しかも自信満々に」
5時を告げる、夕焼け小焼けのチャイムが鳴り始める。
さっき耳にした小学生たちだろうか、賑やかなあどけない声が二人の後ろの方を通り過ぎていく。
チャイムが聞こえたときより、頭上に広がる茜空を見たときより、からっぽになったお腹を抱えて家路につく子どもたちの声を耳にしたとき、もうすぐ一日が終わるのかと強く感じる。
「思葉、明日空いてるか?」
ブロックから降りた來世が、ふいに思葉を振り返って尋ねた。
思葉は眉間に軽くシワを寄せて唇を尖らせる。
「何言ってんの、明日まだ学校あるわよ、さぼる気?」
「放課後の話だよ、おれ明日は部活休みだから一緒に勉強してやれるけど」