妖刀奇譚





「そ、そうなんだ」


「なんじゃ、なにをそんな驚いとる」


「誰だって驚くよー、家に帰ったらおじいちゃんが凶器持って楽しそうに笑ってたら」


「アホ、笑っとらんわい」


硝子戸を閉め、思葉も番台に腰を降ろした。


永近と一緒にその刀を観察する。


日本刀を目にするのは初めてじゃないので、そこまで新鮮味は抱かない。



「思葉、この刀は太刀か脇差か、それとも打刀か、分かるか」


「えっと……太刀?」


「そう、これは太刀だ。しかも平安時代あたりのものだな」


「どうして?」



思葉が尋ねると、永近は柄を外して茎(なかご)を指差す。


茎は中程辺りから急に幅が狭い形になっていた。



「この形、鳥の股のように見えるだろ?


これは雉子股形(きじももがた)といってな、平安時代から鎌倉時代中期にかけてつくられた太刀によく見られる形状だ。


梨子地肌(なしじはだ)は山城伝系に見られる大きな特徴だな。


銘は二字銘、裏銘は無し」


「二字銘って?」


「刀工の名前だけを切った銘のことだ、前にも教えただろう」



永近が思葉の頭を軽く叩く。


叩かれたところを押さえながら思葉は刀工の銘を見た。




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