妖刀奇譚





思葉は思わず吹き出していた。


そうだ、この太刀は平安時代に生まれたのだ。


現代の文化や一般常識は知らないのだろう。



「な、なにがおかしい」


「だってそんな男女差別、今の社会にはないよ、昭和レベルどころじゃない。


女の人が習い事とかで武器を持つのは不自然なことではないよ。


あたしだって、手首痛めてやめちゃったけど、一応中2まで剣道習ってたしね。


居合斬りも何度か教えてもらったよ」


「なんと……!女も闘いの術を身に付けなければ生きてゆけぬのか」


「いや、そんな壮大なレベルの話じゃなくて……何て説明すればいいかなぁ」


「ここに来る前から、あの神社を出てからひしひしと感じてはいたが、人間の暮らしの様式もずいぶん変化したものだな。


思葉、おまえが袖を通しているその着物も珍しい。


おれが人里を離れあの神社に置かれたときは、そのような格好をしている者はいなかったぞ」


「ああ、セーラー服のこと?」



思葉は赤いネクタイをつまんだ。


田舎っぽいけれどその割にかわいいデザインなので気に入っている。



「せ、せえらあ……なんだそれは?」



(――うわ、結構めんどくさいことになったかも)



太刀の知らないものを逐一説明する自分を想像して、思葉はそっとため息をついた。




< 54 / 376 >

この作品をシェア

pagetop