妖刀奇譚





「……おまえが物に対して気になるときは大抵、何かあるときだからな。


まあいいだろう、ただしこれは真剣なんだから振り回すんじゃないぞ。


登録証ができるまでは外に持ち歩かないことと、これは市から引き取ってくれと頼まれた物だと忘れないこと。


あと、危険だと感じたらすぐにわしに言うんだぞ、いいな?」



少し怖い顔になって永近はそう言うと、ポケットから数珠を取り出して示した。


その心配はないだろうと思いながらも思葉は頷いた。


永近が廊下に戻る。


リズミカルに階段を駆け下りていく音を聞いてから、思葉はふうと息を吐いた。


それまで静かにしていた太刀が声を発する。



「今のはおまえの祖父だな。


かなり使い込んだ数珠を持ち歩いているようだが、やつは術使いか何かか?名前は?」


「満刀根永近だよ。


あたしもよく知らないけど、おじいちゃんはすごく感じられるし、ちょっと憑かれやすい人みたいなの。


観たり聴いたりすることはできないらしいけどね。


それで自分の身を守るために、昔からそういう術を勉強してたんだって」



思葉とは異なり、永近が感じるのは心霊の類のものだ。


そういうものが絡む物も自分のもとに集まりやすいようで、それがきっかけで骨董品屋を始めたらしい。


一緒に暮らし始めてから随分経つが、思葉がアンティークな物によくまつわる心霊関係の出来事に遭遇したことがないのは、永近のそういった能力のお陰だろう。




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