妖刀奇譚





そして永近は自身がそうであるから、思葉の力を信じてくれている。


蔑ろにせず思葉の話に耳を傾け、好きなようにやればいいと寛容な姿勢で接してくれるのだ。


時折、人とは異なる視力を持つ者としての心得も教えてくれた。


なので幸いにも思葉は永近の元に来てから、この力のせいで人間関係に悩んだり辛い気持ちになったりしたことは一度もなかった。


太刀が「ふぅん」と納得した調子で言う。



「なるほど、だから先程あやつに調べられていたときに匂いがしたのか」


「匂い?」


「術使いにはそれ特有の匂いがするんだ。


別に術を使えなくても、霊感の強い者は他の人間とは違う匂いを漂わせている。


だからおれはそういう人間の前ではできるだけ口を閉ざしてきたが……」



ふいにそこで言葉が途切れた。


妙な区切り方だったので思葉の心は少しだけ落ち着かなくなる。



「な、なによ?」


「思葉、おまえからはその匂いが一切しないのに、なぜおれの声が聴こえた?


それが不可思議でならん」


「そんなこと言われても……あたし自身この力についてよく分かってないし。


おじいちゃんの遺伝なのは確かだと思うんだけど」




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