妖刀奇譚
そんな話をされても、自分には観ることができないし確認の仕様がないので困る。
これだけ詳しく話されると嘘じゃないかと疑いにくい。
何だか怖くなってきてしまい、思葉はそれを誤魔化そうと教科書を机にしまい始めた。
「どうした、急に片付けなんぞ始めて」
「急にでもないでしょ、それに片付けなんて毎日やってるわよ」
「分かったぞ。さてはおまえ、今の話が怖かったんだな?」
太刀が意地悪い口調で聞いてくる。
もし人間の顔がこの太刀にあったら絶対ににやにやしているだろう。
思葉はふくれっ面になって太刀を睨みつけた。
「怖いに決まってるでしょ、あんたの話。
あたしはあんたみたいな変なものを観たり聴いたりすることはできるけど、心霊関係のものは一切観えないんだから」
「おい、変なものとはなんだ、おまえの方がよほど失礼じゃないのか」
「人が怖がるようなことをわざと言ってくるあんたに言われる筋合いなんかないわよ」
「さっきから気になっていたが、その『あんた』は止してくれないか。
おれの十分の一の年月も生きていない小童(こわっぱ)に呼ばれるのは癪に障る」