妖刀奇譚
線
「模試終わったばかりなのに、また別の模試があるなんて納得できない。
あと来週末は定期試験だし……この試験ラッシュ本当に何なの?
こんなに生徒苦しめていいの?」
「進学校に文句言っても始まらねえぞ思葉。
あと今回の定試は来月の本試験と併せての評価になるから、今回だめでも次頑張ればどうにかなるよ。
それと、そこ間違ってるからな」
「え、何で?」
「面積が38分の243ってどんだけ中途半端な答えなんだよ、少しは疑えって。
図をよく見てみろよ、この座標はこれとこれの交点になるだろ。
だからこの平行四辺形じゃなくて、こっちの二つを頂点にした三角形を利用しないと問題文の比が使えなくなるぞ」
「……どういうこと?」
「あー、だから」
翌日に2つ目の模試を控えた木曜日。
思葉は学校から直接來世の家に来ていた。
今はテスト週間の真っ最中なので部活はないのだ。
この時間帯は來世の家には誰もいないので静かであり、誘惑に負けそうになるとお互いに釘を刺し合えるので、勉強に専念できる。
いつの間にか、模試が近づいたりテスト週間に入ったりすると、來世の家で勉強会を開くことが二人の間での恒例行事になっていた。
「もう、2次関数とか意味分かんない」
なかなか点数が取れない2次関数の応用問題に躓き、思葉はテーブルに突っ伏した。
グラスの中で氷が涼やかな音を転がす。
その頭を來世がシャーペンのノック部分で叩いた。