妖刀奇譚
「でも、まあ、あんまり気になるんだったらさ」
一気に半分ほどレモンティーを喉に流して來世がにっと笑った。
「一回そいつと遊んでみたらどうだ?
飯行ったりとか、カラオケに行ったりとか、そこは何でもいいけど。
距離を縮めるっつーか、相手との距離感を掴むいいきっかけにはなるぜ。
おれも部活の先輩や後輩とは、そうやって距離縮めていったぞ」
「ゲームセンターに行って不良に絡まれて、ガンシューティングでボロ負けしたこともその一貫?」
「……なんで2年も前のこと覚えてるんだよ」
得意げに話す來世に少し腹が立ったので、思葉はちょっとだけ意地悪になった。
当時を思い出した來世はあっという間に気力を失った顔つきになる。
けれども、確かに手っ取り早く相手を知ることができる手段であると納得はしていた。
納得はしたが問題は、その対象が人ではなく人に似た側面を持つ太刀ということだ。
(太刀と遊ぶってどういうことだろう……人間と同じなわけにはいかないわよね、どう考えても。
あいつ、無機物じゃなくて本当に人間だったら楽だったのに)