妖刀奇譚
直
定期試験が終わった翌日の土曜日。
いつものように思葉はベッドに寝転び、読みかけのハードカバーの本を開いていた。
月曜日のテスト返却のことは頭の隅に追いやっている。
玖皎は流行りのアーティストの曲を流す思葉のウォークマンに聴き入っているので静かだ。
いつ永近に見られても特に怪しまれない、玖皎の暇つぶしである。
ちなみに思葉が学校に行っている間はそうするにもいかないので、窓辺に置いて外の景色を眺めることで我慢してもらっていた。
なので玖皎の定位置は、カラーボックスの上というやや危なっかしい場所になっている。
「思葉」
「んー?」
「おまえが今読んでいるのはどのような書物だ?」
「書物なんて大層なものじゃないよ、ただのファンタジー小説」
思葉は指をしおりにして挟み、本の表紙を玖皎の方へ向けた。
地下に広がる世界を舞台にした、映画化もされている有名な海外のファンタジー小説である。