妖刀奇譚
「ふぁ、ふぁんたじぃ……なんだそれは」
「ええと、現実的じゃない部分にカーソル、あっ、視点を置いた読み物だよ。
魔法が使えたり異世界に飛ばされたりモンスターが出てきたりって色々あるけど、これは地下に帝国を創った人間に酷似した種族のところへ迷い込んだ男の子の話」
「……お、おう」
(絶対に分かってないわね)
枕元にあったしおりを挟み、思葉はベッドに座って話の概要を詳しく解説する。
だがそもそも玖皎はその言葉の意味するものをよく心得ていなかったので、なかなか先へと進められなかった。
ようやく一章の半分までの内容を説明し終えたとき、廊下から足音が聞こえてきた。
思葉は口を閉じて本を広げる。
「思葉?入るぞ」
「うん」
何か細かい作業をしていたのか、永近がメガネを掛けたまま入ってくる。
カラーボックスの上に置かれている太刀を見て一瞬顔をしぶくさせたが何も言わなかった。
「ほれ、登録証が届いたぞ」
「ホント?」
「嘘ついてどうする」
思葉は跳ねるようにベッドから離れて、差し出されたクリアファイルを受け取った。
いくつかの書類の中に、材質の異なる小さな紙が挟まってある。