妖刀奇譚
右上と左下の捺印が目を引く、『鉄砲刀剣類登録証』と印字された紙だ。
裏には注意事項が細かい字でびっしり示されている。
「良かった、これでくしっ」
「うん?」
うっかり名前を言いそうになって、思葉は舌の先を噛んで顔をしかめた。
聞き直してきた永近に首を振る。
「ううん何でもない、これが届いたってことは、あの太刀を処分される心配がないってことだよね?
それに錆落としとか鮫肌直しとか、刀の修理を自由にしていいってことだよね」
「そうだ。直したって反則にはならんし、それを持ってならその太刀を外へ持ち歩いても文句は言われん。
あと、所有者の名前はおまえで登録しておいたからな」
「……へっ!?」
あまりにもさらっとした口調で言われてしまい、思葉は危うく聞き落としそうになった。
刀剣の保管についての書類から勢い良く顔をあげた孫娘に驚きつつ永近は頷く。
「え?おじいちゃん、な、なんで?」
「なんだ、駄目だったか?」
「いや、駄目なんかじゃないけど……どうしてあたしの名前で?
いつも満刀根屋に刀や銃を預けられたら、登録するのはおじいちゃんの名前にするのに」