妖刀奇譚
「そんな面倒な手段を踏まねばならんのか」
「銃刀法で決まってるからしょうがないわよ、立派な凶器だもん」
「……その紙、よく見せてはくれまいか」
「え?いいけど……」
ふいに玖皎の声音がワントーン下がったように感じた。
思葉は少し疑問に思いつつ、カードケースに入った登録証を見せる。
しばらく経つと玖皎がため息をついた。
「……これがなければ、おれは壊されるのか」
悲しげな声が思葉の胸にちくりと刺さった。
すぐに玖皎の言っていることの意味が理解できず、一瞬だけ息が詰まる。
思葉は数分前、勢いで『処分』と口にしてしまった自分を殴り飛ばしたいと本気で思った。
しかし、一度出してしまった言葉は今更どうにもできない。
視線を巡らせながら言葉を探す。
「……そう、だね。
所持を認められない刀や銃は、警察署に届け出て処分してもらうことが決まりになっているの。
今は刀や銃を持って戦い合う必要のない時代だから、美術品や歴史的価値のあるものとしてで所持が認められているのよ」
「……そうか」