餓鬼と大人の恋愛事情.
1.一目惚れを信じるか
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それは、新しい赴任先での事だった。
「先生、好きだ。付き合ってくれ。」
「.....は?」
いきなり、
生徒に告白された。
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1.一目惚れを信じるか
アタシ、 屍柯 拭(しか ぬぐい)は高校教師。
現在20代の、新任教師。
初めての赴任先は、ここ、
【夢追高校(ゆめおいこうこう)】
という場所だった。
とにかくこの学校は変わっていて、
入学資格は【校長に認められること】
だったっけか。
施設はそれなりにいいし、
不自由する面もない、そんな学校。
アタシはここの臨時教師として働くことになったのだ。
担当科目は数学。
ま、一年契約だから生徒達になんか思いれもなく終わるだろう。
そう思っていた。
アタシが担当するのは、2年生の教室。
めんどくさい全校集会を終わらせ、次に待っていたのは各教室への挨拶。
....はぁーぁ、既にだるい。
アタシがため息をついたそんな時。
目の前の2-Bのクラスから、
同い年くらいの長身の先生が出てきた。
そいつはアタシに笑いかけてきた。
「..初めまして。新しい先生ですね?俺は、狩夜 隼(かりや しゅん)と申します。担当科目は社会です。どうぞ宜しくお願いします。」
「ぁっ、アタシは、 屍柯 拭(しか ぬぐい)、です、宜しくお願いし、します!」
咄嗟に頭を下げた。
凄く、かっこいい先生だった。
茶色の様な、金色の様な、綺麗な髪。
綺麗な目。綺麗な言葉遣い。
アタシは一目で、恋に落ちた。
「ではまた、職員室で。」
「は、はい!ではまた!」
かっこよかった。
......アタシは生まれてこの方、男にはときめいてきたことがない。
むしろ、男なんて嫌いな方だ。
そんなアタシが簡単に、恋に落ちるなんて。
ぁあ、たまらなく胸が痛い。
これが、恋なのだろうか?
どきどきする気持ちを抑えながら、
アタシは各教室への挨拶をすませる。
そして最後の教室、2-Eへ入り、
思わず目を見開いた。
そこは、美男美女の巣窟、と言っていいほどレベルの高い生徒ばかりで。
気後れしそうだ。
アタシはそもそも外見には自信がない。
胸はないし、くびれもない。
自慢できると言えば腰まである髪の毛くらい。
「...あ、新しくこの学校で数学を教えることになりました、宜しくお願いします...」
戸惑いながらも自己紹介をすませる。
すると、一人の生徒がアタシに近寄ってきた。
少し茶がかかった、チャラそうなそんな男。
「....先生」
「...は、はいっ?」
「先生、好きだ。付き合ってくれ。」
「.....は?」
突然の告白。
....アタシは思わず、高校の時の癖が出て、
悪態をつきそうになる口を何とかこらえた。
「え、あ、あの...」
「一目惚れなんだ!なぁ先生....一目惚れを、信じるか....??」
「....は、はぁ」
教師生活、1日目。
一目惚れを、して、されました。