【完】狂犬チワワ的彼氏
ことの原因は、今から約一週間前の夜。
あたしの元にかかってきた一本の電話にあった。
(一週間前)
「…もしもーし?」
あたしが部屋で独りゴロゴロしていたら、ふいに同じクラスの朝比奈芽衣(アサヒナ メイ)から電話がかかってきた。
芽衣とは普段から仲が良く、たまに二人でショッピングに行ったりして遊んでいる。
あたしがそれに出ると、電話の向こうで芽衣が言った。
『あ、妃由?』
「うん、何?」
『あの、突然で何だけど…
今度、泊りで海に遊びに行きたいとか思わない?』
芽衣は言いにくそうにそう言うと、あたしの返事を待つ。
…でも、
泊りで、海?
「…どうしたの、突然。ってかどこの海に行くわけ?」
あたしがそう聞くと、芽衣が言った。
『う、海は、あたしのパパの別荘。あそこならそんなに遠くないし、ほとんど貸切状態だし』
「あー、そうだねぇ」
…そう言う芽衣の家は、実は凄くお金持ちだ。
その別荘には、あたしは今までにも何回か行かせてもらったことがある。
けど、なーんか…芽衣の様子がおかしい。
「ねぇ芽衣…なんかあった?」
『!』
そんな芽衣にあたしがそう言ったら、芽衣がまた言いにくそうに言った。
『……くん、に…会いたくて』
「え?何?」