【完】狂犬チワワ的彼氏
今までにないくらい真剣な目をした拓海くんと、目が合った。
その瞬間に、あたしの心臓が一番大きな音を立てる。
でもあたしは…
「や、やだなぁ拓海くん…」
「…?」
「それ、拓海くんらしくないよ」
「!」
そう言って、照れ臭さのあまりふっと目を逸らして顔を背けた。
…さっきのキスシーンが、頭の中にこびりついたように離れない。
そして、いたたまれなくなったあたしは…
「…って、てか…早く戻ろうよ」
「…」
「芽衣たちが、待ってるし」
そう言うと、その場を離れようとした。
…とにかく、キスをしたあとのこのドキドキの空間に、恋愛初心者のあたしは堪えられなかった。
だって、相手は大好きな拓海くんだから。
嬉しいのにそれを表せなくて、気がつけば逃げようとしていた。
……けど。
「待てよ、妃由」
「!?」
あたしが逃げようとしたその瞬間、それを拓海くんに素早く阻止されてしまった。