【完】狂犬チワワ的彼氏
拓海くんはあたしの手首を掴むと、そのまま自身の方へと引き寄せて後ろからあたしを抱きしめる。
その腕にまたしてもドキドキしっぱなしでいたら、拓海くんがあたしの耳元で言った。
「…そんなに花火がしたい?」
「そ、そんなわけじゃ…」
「だったらいいじゃん。もう少しくらい、いいだろ」
そう言って、より強く抱きしめられる。
…確かに、拓海くんの気持ちはわからなくもない。
だって今日は昼間もずっと4人で騒いでいたから、少しくらい2人の時間が欲しかった。
それにあたしだって、それを求めてた。
拓海くんと何か一つ思い出を作りたいって。
……でも、どうして急に拓海くんはこんなことを…。
…って、あ……ヤキモチ、だっけ。
だけど何だかんだで拓海くんも同じ気持ちでいたのかと思うと、不安になっていたぶん凄く安心する。
………安心、するのだけど。
それは良かったけど…
「…~っ…」
「……妃由?」
でもやっぱり…ドキドキしすぎて苦しい思いは消えなくて。
いざとなると、拓海くんのことを好きなぶん、どうしていいかわからずに体が硬直する。
…心臓の音が、拓海くんに聞かれていないだろうか。
汗臭い、とか…思われていないかな。
余計なことを考えて、不安になっていく。