【完】狂犬チワワ的彼氏
芽衣はそう言うと、心配そうにあたしの顔を覗き込む。
…あぁ、そうか。
そう言えば、そんなことを言っていたっけ。
あたしはそう思うと、首を横に振って芽衣に言った。
「ううん、もう大丈夫だよ。ごめんね、ほんと」
「いや、それは別にいいけど」
…と、そんなふうに心配してくれる芽衣を見ると、何だか自己嫌悪に陥る。
って、そりゃそうだ。だって「体調が悪い」なんて嘘なんだもん。
夕べはもう超~元気だったし。
あたしは芽衣に心の中で謝ると、洗面所を借りた。
ってか、こんなに広くて綺麗な別荘があるだなんて…羨ましいな、ほんとに。
…………
それからは拓海くんや直樹も起きてきて、出かける支度をすると予定通りにみんなでショッピングモールに向かった。
拓海くんは普通にしていたけれど、一方のあたしは、拓海くんを見ることすら緊張してしまって…いちいち意識してしまう。
拓海くんと思い出を作りたいって、あんなに意気込んでいたくせに情けない。
所詮は恋愛初心者だ。
キス一つで、思うように出来なくなる。
そして皆でバーベキューの材料を見ていたら、ふいに直樹が他の二人に聞こえないような小さな声であたしに言った。
「…なぁ」
「うん?」
「お前、何かあった?」
「…え、」
「だって何か…夕べからずっと変だし」
直樹はそう言うと、「木塚のことか?」と言葉を付け加える。
「…ん、」
拓海くんは直樹とのことを嫉妬してくれていたみたいだけれど、でもあたしにとって何でも相談できるのはやっぱり直樹で。
こんなことを話せるのは、直樹しかいない。