【完】狂犬チワワ的彼氏
そう言って、冷たいセリフを口にした。
龍也は普段から、智輝の彼女をお下がりとして貰ってる奴だから。
お前なんてそれで十分だろ。
しかし、俺がそう思っていたら…
「俺だって一人の人間です」
「…?」
龍也がふいに、ワケのわからないことを言い出した。
「だから、ちゃんと嬉しい時だってあるし哀しい時だってあるし、ムカつく時だってあるんです」
「…何が言いたいんだよ」
「つまり、俺だってちゃんと、1人の女の子を…好きになるときくらいあります」
「!」
「特に好きになれない女の子をもらうくらいなら、俺は大好きな女の子の方が欲しい。その相手が妃由さんなんです」
だから、妃由さんを俺に下さい。今すぐに。
そう言うと、俺に向かって深く頭を下げた。
…突然のことすぎて、なかなか頭がついていかないけれど。
何かヤバイ展開になっているのは事実だし。
俺が何も言えずに固まっていると、龍也はゆっくりと顔を上げて…言った。
「…もし、無理だったら…」
「?」
「力づくで、奪います」
「!」
「拓海さん、ご存知ですか?
女なんて、顔さえ好みであれば本当は誰だっていいんですよ」
そう言って、何を考えているのかさっぱりわからない笑顔を浮かべる。
そしてその時、俺はこの前の海で妃由に言われた言葉がふいに脳裏を過った。