【完】狂犬チワワ的彼氏
忍び寄る影
「ただいまー」
ピンクの封筒を手に家の中に入ると、
リビングには智輝と龍也がいた。
「…おかえりなさい」
そんな俺に龍也が答えるけれど、俺はその声を聞こえないフリをして、ソファーに座っている智輝の後ろ姿に近づく。
「ん、買ってきたぞ。“冷やすもの”」
「おー、サンキュー」
「…ひでぇな、顔。真っ赤になってんぞ。どんな女に殴られたんだよ」
そしてそんな智輝の顔を覗き込んで俺がそう言えば、智輝は“冷やすもの”を黙って受け取ってそっぽを向いた。
…まぁいいけど。
「お前そのうち殺されるかもな」
俺が言葉を続けてそう言うと、智輝がやっと口を開いて言う。
「…うるせー」
「…」
「お前の女に殴られたんだよ。最悪だよ、アイツ。顔だけは可愛いクセに」
「!!…は、」
だけど俺は、そんな智輝の思わぬ言葉に反応すると、信じられない事実にびっくりして振り向いた。
…“お前の、女”…?
って………妃由!?
「えっ…もしかして、妃由に殴られたのか!?」