【完】狂犬チワワ的彼氏
何か、あったの?
前を歩く拓海くんに、あたしはそう聞こうとするけれど…
でも、拓海くんはそれに答えてくれるような雰囲気でもない。
…まぁ、いいか。別に気にするほどのことでもないだろうし。
あたしはそう思うと、やっと拓海くんに追いついて隣に並んだ。
でも、
「…あ、」
「?」
その直後、ふと何かを思い出したように拓海くんが立ち止まって、言った。
「俺、そう言えば今日チャリで来てんだった」
「あれ、そうなの?」
…拓海くんが自転車で登校なんて、珍しい。いつもは徒歩なのに。
そう思いながら、あたしが「じゃあ、待ってるよ」って言おうとしたら、
「わり。一緒に帰んの、また今度な」
「えぇ!?」
拓海くんは勝手にそう言って、自転車置き場に向かって行く。
い、いやいやいや!
「ちょっと待ってよ!」
「?」
「自転車…でも、一緒に帰ろうよ」
「…どうやって?」
「拓海くんは、自転車を押しながらあたしと並んで帰ればいいじゃん?」
でも、あたしがそう言うと、拓海くんはあからさまに「メンドクセー」って顔をした。