【完】狂犬チワワ的彼氏
「何でこの俺がお前のペースに合わせるわけ?」
「え?だ、だって…」
「…」
…ひ、酷い。
普通の携帯小説だったらさ、それが当たり前なのに。
っていうか、現実でもそんなもんだと思ってたのに。
拓海くんは、本当にあたしのこと好きなの!?
そう思ってあたしが少し落ち込みかけていたら、ふいに拓海くんがあたしの手をとって、言った。
「…俺がお前のペースに合わせるとか、無理」
「え、」
拓海くんは呟くようにそう言うと、何故か突然そのあたしの腕を引っ張って、自転車置き場へと向かって行く。
「た、拓海くん!?」
何する気!?
いきなりの行動に少しビックリしていたら、拓海くんは自分の自転車まであたしを連れてきて、その鍵を開けながら言った。
「わざわざそんなメンドクセーことしないで、お前も乗ればいいだろ、」
「!」
そしてそう言うと自転車に跨り、「ほら乗れよ」とでも言いたげにあたしを見る。
その可愛い目に、あたしは思わず「うん!」笑顔で頷きそうになるけれど…
「っ、だ、ダメだよ拓海くん!二人乗りなんて!第一、校則違反…ていうか、先生に見つかったら怒られるし!」
「……」
あたしは首を横に振ってそう言うと、自転車に乗ってあたしを見つめる拓海くんから一歩後退った。