【完】狂犬チワワ的彼氏
「…、」
するとその何気ない言葉に、ふと俺の頭の中に妃由の顔が浮かび上がる。
…会わなくてもいいとか、そんなわけないに決まってる。
出来れば俺だって妃由に会いたいし、何も気にしないでアイツとデートもしたい。
けど…考えてみると、やっぱ今は慎重に行動した方が身のためなんだ。
だってこのストーカーは最近じゃだんだんエスカレートしていて、次には何をされるかわからないから。
だけど俺がそう思いつつ、素直になれずに「別にいいよ」って言ったら、龍也がまた真顔で俺に言う。
「…では、しばらくは俺が妃由さんの彼氏として務めさせて頂きます」
そう言うと、また本に視線を落としてそれを読み始めた。
…ムカつく。
でも、そうなんだよなぁ。
コイツ、妃由を狙ってるから本当は学校「休み」でいいんだよな。
本当のことを言うと龍也には俺の学校に行ってほしくないし、できれば代わりに智輝に行ってほしい。
けどアイツ、妃由にこの前殴られたのが相当頭にきてるのか、「アイツには会いたくない」って聞かないし。
だからって俺はしばらくは自分の学校には行きたくない。
そう思っていると、ふいにまた龍也が顔を上げて俺に言った。
「…あ、そういえば拓海さん」
「?…なんだよ」